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JBMAニュース

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昨日の自分を超える〜アジア記録誕生〜東日本実業団【広報インターン記事】

第60回東日本実業団陸上競技選手権大会
男子・女子5000mのスタート直後
 
トラックシーズンがやってきた。
燦々と競技場を照らす太陽が初夏の訪れを知らせる5月19日、第60回東日本実業団陸上競技選手権大会が幕を開けた。
 
本大会は熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で5月19日・20日の2日間にわたって開催され、非常にレベルの高い闘いが繰り広げられた。
過去のメダリストや東京オリンピック・パラリンピックを目指す選手が多く出場し、会場は熱気で満ち溢れていた。
 
そんな中、今回私が注目したのは視覚障がい者男子・女子1500m、5000m。
視覚障がい者男子1500mのスタート時には、風が強く吹いており、向かい風の状態では上手く呼吸ができないほどの悪条件。
 
そんな風にも負けず「持てるものは出せた」と語るのは唐澤剣也選手。
目標タイムには届かなかったものの、最後の1周では上手く切り替えることができ、力強いゴールシーンを見せた。
結果は4分33秒25で見事1位に輝いた。レース後には「まだまだ満足できる結果ではない。明日の5000mではスピードと忍耐力、どちらも意識して走り抜けたい」と意気込んだ。
 
視覚障がい者女子1500mでは松本光代選手が5分28秒13と大会新記録を叩き出した。しかし松本選手は「正直、悔しい気持ちで一杯。日本記録を目指していたので残念」と試合を振り返った。
合宿や記録会が続き、疲れが貯まっているコンディションで参加した今大会。「これから調整をし、回復させていきたい。明日の800mではリベンジしたい。」と語り、松本選手の陸上競技に対する向上心が伝わってきた。
 
また、同じ1500mに出場した近藤寛子選手は「明日の5000mに向けて、いい刺激を入れることができた」と語った。実は近藤選手が当初予定していた伴走者は故障で走れなくなり、急遽別の人に交代になったのだ。ピンチヒッターの伴走者、金子太郎さんは大会での伴走は初めてだったが、近藤さんは「伴走がすごく良かった。明日が楽しみだ」と笑みをこぼした。金子さんは過去に箱根駅伝にも出場したことのある実力者。視覚障がい者陸上では選手だけでなく伴走者にも注目してみると、より観戦が楽しめるかもしれない。
 
初めてのレース伴走とは思えない息ピッタリの走りを見せてくれた近藤選手と伴走者金子さん

 
筆者は1日目のレース終了後、選手・伴走者と一緒に食事をさせてもらった。レース中に息の合った走りを見せてくれる選手たち。レースだけでなく食事中も息ぴったり。絆という名のロープで手と手を取りあわなくても、信頼で二人が繋がれていた。初対面の選手と伴走者もずっと前から知り合いだったかのように和気藹々と盛り上がっていて、お互いを受け止め合う心があるからこそあの素晴らしいレースを繰り広げることができるのだなと感じた。
 
風が穏やかになり、絶好のレース日和となった大会2日目。
最初のプログラムは視覚障がい男子・女子5000m。
スタート前、会場がしんと静まり爽やかな緊張感がスタートラインに張りつめた。会場の声援を力に一歩一歩足を前に進める選手たちから終始目が離せなかった。
 
「応援してくれた人たちの顔を思い浮かべると、苦しくなった時も頑張れた」と語るのは米岡聡選手。
1秒1秒自分のペースで走ることを心がけ、17分53秒16と自己ベストを更新した。
いつもは硬くなってしまうが今回はリラックスして走ることができたという。
「目標は常に自己ベスト。関東選手権でも自己ベストを出すためにこれからしっかりと練習をしていきたい」と次戦に向けて意気込んだ。
 
女子の部では井内奈津美選手が20分37秒54とアジア記録を更新した。
「記録を狙う最高のチャンスだった。自己ベストを大幅に更新できて良かった」と満面の笑みを見せた。
最初の1000mの通過タイムは4分2秒と想定よりも5、6秒速いタイムとなった。
「いつもなら想定していたタイムよりもハイペースだと怖がってペースを落としてしまう。しかし、今日は積極的に走ることができ、それが勝因だ。」と自らのレースを振り返った。
井内選手は先頭にピタッとついていき、自分のいけるタイミングでラストスパートをかけた。
 
レース序盤、ずっと先頭でペースを作っていた青木洋子さんは「狙っていたタイムを出せなくて悔しい。苦しいところで粘って、ラストをもっと上げられるようにしたい」と今大会で見えた課題について話した。
選手同士が高め合っていることがよくわかるレースであった。
強化選手同士、お互いを刺激し合いながら日本の視覚障がい者陸上のレベルをさらに高めていってくれることだろう。
視覚障がいT11女子5000mでアジア記録を更新した井内選手(左)と伴走者の日野さん
 
レース後には、井内選手の伴走者日野未奈子さんにも話を聞けた。
「1年前から目標にしていたタイムを更新できて感無量。関東パラでは1500でも日本記録を更新したい」と更なる目標を掲げた。
日野さんが井内選手の伴走を始めたのは1年半前。多い時には週5回会うほどの仲だそうだ。
お互いがお互いを思いやり、同じ目標に向かって走り続けているからこそ達成できたアジア記録。
今後も息ぴったりの二人の活躍から目が離せない。
 
次の大会は6月30日・7月1日に行われる関東パラ選手権。夏にはインドネシアで行われるアジアパラも控えている。これからは気温も上昇し長距離を走るには厳しいシーズンとなるが、各々の目標を達成できるようにトラックを力強く踏みしめ、全力で駆け抜けて欲しい。
 
(記事・写真  慶應義塾大学 前田さつき)

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