日本メイスン財団のサポートのもと、9月24、25日に日本盲人マラソン協会主催の伴走者養成・視覚障がい者マラソン研修会が静岡県・掛川市つま恋で行われた。伴走の理論や、盲人マラソンのルール講習会を通し、盲人マラソン・ガイドランナーの普及を目的としている本研修会には視覚障がい者ランナーを含めた総勢32名が参加。実際の伴走体験やトレーニング理論の講習を通し、幅広い世代の人々がブラインドランニングについて学ぶ契機となった。
研修会1日目には基礎的な伴走理論の説明、そしてトレーニング理論の講習があった。伴走理論説明では、鈴木邦雄常務理事が基礎的な伴走方法を自身の経験を交えながら紹介。視覚障がい者はランニングの際、その不安から、どうしても歩幅が狭くなりがちになる。しかし伴走者を信頼できれば自然とその歩幅は広がり、安心して走り出すことができるのだという。「一歩を安心して踏み出せるようにするのが我々伴走者の役目です」(鈴木常務理事)。ストライドや、ロープで繋がれた腕の振りのペースを合わせるのは必須。また、常に言葉を絶やさず、的確に危険物・障害物を伝えながら伴走する必要があるが、その際に「KYT(危険予知トレーニング)」を念頭に置かなければならない。
「KYT」は場所や状況によって危険を先回りして考えるということ。例えば公園で練習をする際には、遊んでいる子供が予測できない動きをするかもしれない。それも含めて危険を察知・伝達できるかが信頼を作る上でのカギとなる。
また、トレーニング理論の講習では安田享平強化担当理事から、練習サイクルの重要性やトレーニングの種別とその目的についての説明があった。安田理事は先日のリオパラリンピックでも日本チームのコーチを務めたベテランの指導者。ブラインドランナーはもちろん、伴走者も走力向上のための指南を受けた。
2日目には早朝6時から朝練習を敢行。軽いジョッグをしたのち、「クーパーテスト」が行われた。クーパーテストとは12分間各自のペースで走り、その距離によって走力レベルを計測するというもの。先頭を走るブラインドランナーは制限時間内に3000メートル弱を走破し、1キロ約4分20秒という好ペースで走りきった。
その後は前日に引き続き伴走理論の紹介と、リオパラリンピックの報告会が行われた。伴走理論説明ではロープの握り方やどのような声をかけるべきかといったより実践的な内容を紹介。講習を受ける伴走者も積極的にメモを取る姿が目立った。リオパラリンピック報告会は安田強化担当理事が担当。選手たちのコンディショニング維持の方法や、当日のレース戦略の考え方など多岐に渡る話を披露した。盲人マラソンで男女でメダルを獲得した今大会の結果を踏まえ、「また東京ではメダルを狙いたい」と報告を締めくくった。
主に競技中・練習中の注意事項や伴走テクニックについて学んだ研修会だが、宿泊中は健常者と視覚障がい者が寝食をともにした。ランニングだけではなく、日々の生活を通し、伴走者と視覚障がい者の双方が得たものは多かったはずだ。「視覚障がいのある方に声をかけて助けることに、ためらいがなくなったかな」。今回が2回目の研修会参加となった伴走者の男性は語る。このような輪が広く、深く浸透することを願わずにはいられない。
文章:早稲田スポーツ新聞会 平野 紘揮
写真:日本盲人マラソン協会