2017年8月にイギリス/ロンドンで開催されるIAAF第16回世界陸上競技選手権大会のマラソン選考レース・別府大分毎日マラソン大会。世界選手権への切符を獲得するため、中本健太郎(安川電気)ら一流のランナーが出場したこの大会には、「視覚障がいマラソンの部」も設けられている。今回は2020東京パラリンピックを見据え、ベテランの選手のみならず、若手のブラインドランナーたちも参戦した。
当日は路面が多少湿っていたものの、穏やかな天気に恵まれた。ブラインドランナーたちのレースは29歳の熊谷豊(T12クラス、AC KITA)を中心に進んでいく。熊谷は5キロを17分25秒で通過し早くも後続を突き放すと、その後は淡々とペースを刻み続けた。終盤に立ち止まってしまう場面があったが、フィニッシュ地点が近づくにつれペースを上げ、そのまま見事優勝。昨年の3位から順位を上げた。熊谷に追いすがった高井俊治(T13、JBMA)は終始2位の位置をキープし、そのままフィニッシュ。また、山下慎治(T12、OBRC)がそれに続いて3位に入り、笑顔でゴールテープを切った。山下は自己ベストを42秒更新する好走だった。
写真/フィニッシュテープを切る熊谷選手
女子からは安部直美(T11、JBMA)、青木洋子(T12、JBMA)の2名が出場。序盤は青木が積極的なレースを展開し、安部との差を広げていく。15キロ地点では安部に2分の差をつけた。しかし、後半に入ると失速。40キロ手前で安部がその差を逆転し、先頭に出る。安部はそのままペースを落とさず走り続け、1位でフィニッシュした。安部のゴールタイムは3時間18分07秒。これは自身の持つ盲人マラソンT11クラス女子日本記録を更新するタイムだ。安倍にかわされた青木も粘りきり、自己ベストを1分以上更新してゴールした。こちらも日本歴代5位という好記録をマークした。
コンディションにも恵まれ、自己ベストや好記録が多く出た今大会。2020東京パラリンピックまで、残された時間は決して多くない。最大の目標と位置付ける選手も多い中で、今回の結果を弾みに今後につなげることができるか。来シーズン早々の4月23日に2017World Para Athletics Marathon World Cupが開催され、2020東京を見据えた力試しとなる。この大会からも目が離せない。
文章/早稲田スポーツ新聞会 平野 紘揮
写真提供/EKIDEN-News