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かすみがうらマラソン2017(広報インターン記事)

季節外れの強い日差しが照り付け、気温25度を超える夏日となった4月16日(日)。茨城県土浦市でかすみがうらマラソン兼国際盲人マラソン2017が開催された。「5キロの部」、「10マイルの部」、「フルマラソンの部」の3種目が設けられ、延べ145人の視覚障がいランナーがエントリー。国内唯一の視覚障がいクラス(T11-T13)の国際パラリンピック委員会(IPC)公認大会であり、フルマラソンのIPC登録の部は、国内外から7名の選手が出場した。

 

かすみがうらマラソンと国際盲人マラソンを兼ねたこの大会では、全種目において視覚障がいランナーと晴眼の一般のランナーが同時にスタートする。公道を数百メートルに渡って覆いつくすほどの大集団が、号砲と共に一斉に勢いよく飛び出すのだ。選手同士が接触することもしばしばある。多くの情報を聴覚から得て走る視覚障がいランナーたちは、四方から聞こえる足音や、接触による転倒などの恐怖はないのだろうか、そんな不安を覚えた。しかし10マイルの部に出場した小林里美(こばやしさとみ)さんは、「怖さもありますが、伴走者を信頼しているので」とさらりと語った。ランナーと伴走者の間に芽生える絆。それはこれほどまでにも強く、厚い信頼に基づいているのかと正直驚いた。

最高気温27度という例年にない暑さの中開催された今大会。参加者は皆、背中や額に汗をびっしょりとかき、時折苦しそうな表情も浮かべる。しかし最後は伴走者と共に両手を挙げて、完走の喜びを分かち合いながら笑顔でゴール。そんな姿が非常に印象的であった。

このような過酷なコンディションの中で、IPC登録の部に出場した井内菜津美(いのうちなつみ)選手が自己ベストを2分以上更新し、3時間40分02秒でフィニッシュ。井内選手は今年度の強化選手に指定されており、今後のさらなる活躍に大いに期待がかかる。

 

20年以上に渡って視覚障がいランナーにも門戸が開かれている本大会では、伴走ボランティアや記録証への点字サービスなど、視覚障がいランナーが不自由なく大会そのものを楽しむことができるように様々な体制が整えられている。積み重ねた歴史と経験に基づいて確立されてきたその運営様式は、視覚障がいランナーを受け入れるマラソン大会の一種のロールモデルにもなってきた。ボランティアの一例に、順天堂大学陸上競技部の選手による伴走やレースパトロールが挙げられる。この活動は毎年行われており、今年も多くの大学生が視覚障がいランナーと共に汗を流した。今年1月の箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝)で4区区間賞を獲得した栃木渡(とちぎわたる)選手は伴走について、「非常に責任を感じるし、指示を出すタイミングや相手のリズムに合わせて走ることが難しい。レース中はランナーの気持ちを盛り上げるような言葉を多くかけるようにした」と語った。

 

一般の市民ランナー、車椅子ランナー、視覚障がいランナー。障がいの有無や年齢、目的、すべて異なる人々が同じコース、同じ条件で汗を流す。純粋に『走ること』に没頭し、苦しみ、楽しむ。そこには何の差異もないこと、誰もが同じようにスポーツを楽しめることを改めて感じさせてくれる、そんな大会であった。これから先も5年、10年と、春を迎えた霞ヶ浦の地でたくさんの笑顔が見られるように――。そんなことを願わずにはいられない。

文章/写真:早稲田スポーツ新聞会 太田 萌枝

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