毎月第1週目の日曜日に日本盲人マラソン協会(JBMA)主催で開かれる定期練習会。ゴールデンウイーク最終日となった7日の晴れた青空の下、総勢130名ほどが代々木公園に集まった。早稲田大学の体育会からも応援部、ワンダーフォーゲル部、ウエイトリフティング部、自動車部、剣道部からあわせて12名がガイドランナーとして練習会に参加した。またこの日はパラリンピックの競泳種目でいくつものメダルを獲得した河合純一氏もランナーとして参加し、ガイドランナーらと汗を流した。
初めて来た人の自己紹介から練習会は始まる。この日は約30名が初参加。「ブラインドランナーの目となれるように頑張ります」などそれぞれが意気込みを語った。その後、体操を行う。体操は視覚障がいの参加者が声で聞いてどう体を動かせばいいのか分かるように、すべて口頭で詳しく説明される。2人1組でストレッチを行うときには、健常者が視覚障がいの人に声を掛け、自然とペアができあがっていた。動きを教えあう姿も見られ、コミュニケーションが図られていた。
体操が終わると、初めてガイドランナーをやる人向けに『ミニ伴走教室』が開かれる。ガイドランナーとしての心得として、「相手の人が安心して走れるように」とガイドランナーとして先駆者の鈴木邦雄さん。まずは視覚障がいを持つ人はどのような世界を見ているのか視野が狭くなるように工夫されたゴーグルを掛けて体験する。相手への理解が伴走にもつながるのだ。その後に実際に伴走をする際にどのようなことを注意すればいいかを教わった。段差、縁石などがあれば視覚障がいランナーに言うこと、また自分が離れるとき、戻るときも相手に伝えること。「無言は恐怖」。歩きながら、走りながらも積極的にコミュニケーションを取ることが大切だ。
『ミニ伴走教室』を終えた後、実際に伴走をしてみる。この日は伴走者の中でもアイマスクをした状態で走ってみる人もいた。アイマスクをつけて走る体験をしてみた人は「初めは怖かったけど、慣れてくると大丈夫」。とは言え、視界をさえぎられた状態だと普段ならあまり気にならないマンホールの凹凸なども気になるそうだ。またガイドランナーとして走った参加者は、「走りながら、周りを見ながら、しゃべりながらできついです(笑)」といいながらも、「コミュニケーションを取るのは楽しい」という感想も。コミュニケーションを取るのが楽しいから、という理由で昨年に引き続き2回目の参加を決めた人も多くいた。
練習会終了後には多くの人がしばらくその場にとどまり、会話を楽しむ姿も見られた。練習会は交流の場ともなっている。視覚障がいのランナーは「練習会で知り合った人の中に、平日空いている人がいれば、練習会以外でも個人的にお願いして伴走をしてもらうこともある」と語る。練習会がきっかけとなり、視覚障がいを持つ人たちに新たな走る機会を生み出すこともあるそうだ。視覚障がいランナーにとっても、ガイドランナーにとっても新たなコミュニケーションの場。いつでも門戸が開かれており、練習会だけに留まらないつながりが生まれている。
文章:早稲田大学スポーツ新聞会 杉野 利恵
写真:早稲田大学スポーツ新聞会 太田 萌枝