写真1:女子1500mで日本記録を更新した松本光代選手
夏の太陽が燦々と地面を照りつける7月1日、町田市立陸上競技場でWPA公認第23回関東パラ陸上競技選手権大会が開催された。
その中で私が注目したのは女子1500m。
気温が高く、選手たちにとってはなかなか厳しいコンディションでレースを迎えることとなった13時30分、T11~T13の4人の選手が一斉にスタートを切った。序盤は柏原未知選手(T13、one’s)が先頭に立ち、ペースを作る。その後ろをぴったりくっついて走るのは松本光代選手(T13、JBMA)。松本選手は「1周84秒で淡々と走る」という戦略を立て、レースに挑んだという。序盤は先頭のペースで少しハイペースになってしまったものの、中盤からは自身のペースを掴み、軽やかに一歩一歩前へ進む。「最後の一周は辛かったが、しんどいときこそ腕を大きく振って走った」と松本選手が語るように、ラストもペースを崩さずに見事なレースを見せた。記録は5分21秒30と日本記録を更新した。松本選手はレース後「やっと日本記録を更新できて嬉しい。今度はアジア記録を切れるように、そして世界で戦えるように頑張っていきたい」と更なる目標を掲げた。松本選手のゴール後、未来のエース安部遥選手(T12、筑波付属視覚)は自身の過去の記録を更新し、自己ベストでフィニッシュした。5分40秒を切ることを目標に掲げて挑んだ大会であったが、記録は5分35秒28と大きく上回る結果を残すことができた。安部選手は「ベストを出せて嬉しい。中学の時に5分35秒を切れたので、高校でもその記録を更新したい」と今後について話した。安部選手のような高校生ランナーは伸びしろが沢山あるので、今後の活躍が楽しみだ。
写真2:女子1500m安部遥選手と伴走者の佐藤寛哉さん
日本記録と自己ベストを更新した2人の後ろで悔しい思いをした選手もいた。
井内奈津美選手(T11、わかさ生活)だ。「5分半を切ろうと目標を立てていた。記録を狙うつもりが自己ベストよりもかなり遅くなってしまって本当に悔しい」とレースを振り返った。右肩上がりでトラックシーズンを駆け抜けていただけに、悔しい思いも人一倍大きかっただろう。しかし、ただ悔しくて落ち込むのではなく次戦に向けて前を、見据えていた。
「最初の1周で突っ込んでいって、いいペースを作ろうとしていた。しかし、こんなに高い気温でのレースは久々だったので力を使い果たしてしまった。悪いコンディションの中でどうやって走り抜くかは今日の大会でわかったので、今後に生かしていきたい」と冷静にレースの分析をしていた。伴走者の日野未奈子さんは「伴走者の力と選手の力は比例すると実感した。練習から奈津美さんのコンディションに合わせた声かけや、ペースのもっていき方を考え、私もしっかり走り込みたい」と意気込んだ。
これからは体力を奪い取る真夏の太陽がさらに輝きを強める季節となってくる。トラックシーズンも残りわずか。ゴールの後、太陽よりも輝く選手たちの笑顔を沢山見られることを願っている。
文章・写真 慶應義塾大学 前田さつき