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JBMAニュース

JBMAに関するニュースや世界のブラインドマラソンのニュースを掲載していきます。

第69回別府大分毎日マラソン大会:PART2(広報インターン記事)

今大会では、男子に負けないぐらい、女子の活躍も光った。T12クラスでは道下美里選手(三井住友海上)、T11クラスでは井内菜津美選手(みずほFG)が、世界記録を上回る速さでゴールした。
暖かい気候が好きだという道下選手。そんな道下選手に天が味方したかのように、当日の空は青空で、暖かな日差しがさしていた。
大会4日前にはポイント練習をし、前日も軽く走った。12月に行われた防府読売マラソンに出場した際、30㎞以降で失速してしまったことを反省し、この1ヶ月の間に40㎞走を2回行った。通常、陸上選手は大会前になると練習量を落とす。道下選手も今まではそうしてきていたが、今回はぎりぎりまで強度の高い練習を行ったそうだ。「今回初めての試みなので、上手くいくかはわからない。」と大会前に話していたものの、自身が持つ世界記録である2時間56分14秒を2分近く上回る、2時間54分22秒でゴールするという結果になった。
スタート後は、集団の中で、一生懸命伴走者が誘導しながら走る様子が見られた。注目選手ということもあり、中継車が近くにつくこともあったそうだ。一見走りにくそうだったため、世界記録といえども、もう少し走りやすかったらもっとよい記録が出たのではないかと思った。しかし、大会後に道下選手に話を伺うと、思いがけない言葉が返ってきた。
「市民ランナーの方々が視覚障害を持つ選手のことを認知してくれていて、道をつくってくれたんです。しかも、給水の時に伴走者が「71番(道下選手のゼッケン番号)給水取ります!」と言うと、周りの方が「71番給水取ります!」「71番給水取ります!」と言ってどんどん伝言してくれました。沿道で声を出して応援してくれる人もいました。やっぱり、世界記録はみんなで協力しないと取れないんだなって思いました。」
本大会は、市民ランナーでも制限時間が3時間30分以内という、非常にレベルの高い大会だ。もちろん、自分の記録を狙っている人もいるだろう。そんな中でも、道下選手に配慮し、思いやりのある走りをした人が多くいたということは、とても素晴らしいと思った。
前回の防府読売マラソンで思うような結果を出すことができず、大会後に本大会への出場を決めた道下選手。そんな向上心と、素敵な笑顔、そして周りの人への感謝を忘れない様子が、みんなを惹きつけるのではないかと思った。
 
写真1:スタート前、応援に笑顔を見せる道下選手と、奥から見守る青山ガイド。
 
井内選手は、自己ベストを10分以上上回る、3時間12分55秒でゴールテープをきった。
昨年8月からみずほFGに所属して練習を積んでいる井内選手。練習環境が整ったことも、さらに記録更新に拍車をかけた。また、高低差の激しいコースを走る、かすみがうらマラソンで自己ベストを出した経験があることも、自分の中の自信になっていた。
 前日には、消化のよいものを食べることを意識し、うどんを食べたそうだ。大会が開催された大分県には、とり天や団子汁といった美味しいものがたくさんある。大会終了後に話を聞くと、「今日は祝杯をあげる。伴走者と相談し、美味しいものを食べたい。」と語ってくれた。
 
写真2:力強く走り去っていく、井内選手。
 
さらに女子はパラリンピックへの推薦3枠目も決定した。道下選手に次いで2位に入賞した青木洋子選手(T12、NTTクラルティ)が内定した。青木選手は、昨年8月に行われた北海道マラソンでは、西島美保子選手(T12、福井市陸協)に次いで惜しくも3位となり、推薦内定を逃した。そこから約5ヶ月、努力を重ねた。
推薦内定の1番の決め手となったことを聞いてみると、「伴走者みんなのおかげ。ありがとうと伝えたい。」と少し興奮気味に答えた。今回共に走った2人の伴走者以外にも、青木選手を支えるガイドがいる。その方々に対しても、感謝の言葉を繰り返し述べていた。「ありがとう」という青木選手の気持ちは、きっと支えてきた伴走者にも届いているだろう。パラリンピックでのさらなる活躍に注目だ。
 
写真3:交代した奥村ガイドに、手を挙げて答える青木選手。後方左から、青木選手、奥村ガイド、高田ガイド。

 

 

本大会によって、昨年4月のロンドンマラソンから行われてきた、パラリンピック出場枠の争いは幕を閉じる。6月頃に正式な出場人数とメンバーが決定し、9月に本番を迎える。
私は、昨年8月の北海道マラソンから、広報インターン生として、ブラインドマラソンの取材に関わらせてもらってきた。また、同時期から、自分自身も市民ランナーの伴走を始めた。全体を通して、伴走者が選手を一方的に支えているのではなく、選手と伴走者が共に支え合うことで「ブラインドマラソン」という競技は成り立っているということを感じた。
本大会で、女子の近藤寛子選手の伴走を務めた川嶋さんは、伴走を始めて約15年になる。現在は週に5~6回練習を行う。伴走を続けるモチベーションとなっているのは、「誰かのために走る」ということだ。1人だったら頑張れないことも、2人だったら頑張れる。ブラインドランナーの走りによって、伴走者も励まされているのだ。
 
写真4:3位に入賞した近藤選手
 
パラリンピックまで約半年。男子の堀越選手は、「ぜひ、ブラインドマラソンをやってみてほしい。百聞は一見にしかずというように、やってみてわかることもある。」とブラインドマラソン普及への思いを口にした。この素晴らしい競技を多くの人に知ってもらえるよう、私は一連の取材を通して感じた思いを多くの人に広めていきたいと考えている。そして、パラリンピックの際、沿道が多くの応援の声で埋め尽くされることを願ってやまない。
 

写真5:本大会に出場した選手と伴走者たち。それぞれの思いをつなぎ、ゴールへと向かう。
 
記事・写真 東京農業大学 田中 志穂
 

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