JBMA のすべての投稿

第70回記念別府大分毎日マラソン:レース記事【男子】

 2年ぶりの開催、そして70回目の記念を祝うかのように、選手たちの好走・好記録が光る大会となった。真冬の大分県で開催された第70回記念別府大分毎日マラソン兼第22回男子視覚障がいマラソン日本選手権大会。一般男子の部では大会新記録と6名のMGC出場者が誕生し、視覚障がい男子の部(T11)ではなんと2名がこれまでの世界新記録を更新するなど、オリパラともに2年後のパリ大会で世界で勝負するための戦いが始まった。
 
 視覚障がい男子の部を制したのは、東京パラリンピック5000mと1500mのメダリストである和田伸也選手(T11、長瀬産業)。従来の世界記録を、5分以上塗り替えての初優勝となった。パラリンピックをともに戦った矢嶋謙悟さん、長谷部匠さんの伴走で挑んだ今大会。向かい風の中最初の5kmは17分07秒で入り、好調に滑り出す。第一折り返し地点までの次の5kmでは風とコース内最大のアップダウンの影響も受けてラップを落としたが、折り返し地点を越えてコースを南下し始めてからは、追い風を味方につけスピードアップ。15km地点で後方から追いついてきた、東京パラ5000mのメダリストである唐澤剣也選手(T11、群馬社福事業団)と並走する形でゴールを目指した。2人は世界記録を優に上回るペースで、35kmまでともに歩を進める。第2折り返し地点を迎え、再びランナーを押し戻すような厳しい風に向かうこととなったラスト7km、和田選手はここからが強かった。向かい風の中でもラップタイムを落とすことなく粘り切り、腕を振る力強いフォームのまま競技場へ。世界記録更新のアナウンスとともに2時間26分17秒でゴールテープを切った。終盤まで優勝争いを繰り広げた唐澤選手が、こちらも従来の世界記録を更新する2時間28分27秒で続けてフィニッシュ。ゴール後互いを称え合いながら見せた晴れやかな表情が印象的だった。
3位には一昨年の優勝者、熊谷豊(T12、三井住友海上)が入賞。強い風に苦しめられながらも、故障からの復活へ、次につながる一歩を踏み出した。
 
 今回和田選手が目指していたのは「大幅な自己記録更新」。長年世界と戦うトップ選手でありながら、常に自分と向き合い進化を止めない姿に強さの訳を見たように思う。ベテランの進化と若手の台頭により、レベルが上がっている日本の男子ブラインドマラソン界。切磋琢磨しさらなる高みへ。今後の展開も楽しみだ。
 
文責・写真:太田 萌枝
 
写真:T11男子で世界記録を樹立した和田選手と長谷部ガイド

第70回記念別府大分毎日マラソン:レース記事【女子】

 大会史上初、ブラインドランナーによる女子の部覇者が誕生した。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、規模縮小の中開催された第70回記念別府大分毎日マラソン兼第22回男子視覚障がいマラソン日本選手権大会(別大マラソン)。一般の女子は大分県在住者のみに出場が制限された今大会で、視覚障がい女子の部のみならず女子の部も制したのは東京パラリンピック覇者の道下美里選手(T12、三井住友海上)だった。目標に掲げていた自身が持つ世界記録更新とはならなかったものの、2時間57分20秒で走りきり、大会史に新たな1ページを刻んだ。
 
 快晴ながら終始強い風が吹き続けるコンディションとなった大会当日。当初より、出場者制限により道下選手と近いペースで走れる選手がいつもより少なくなることが想定されていた。風の影響を受けないためにも集団で走れるほうが有利かと思われたが、これまで世界各地で様々なレースを経験してきた道下選手は「ガイドランナーさんの負担も減ると思うし、自分のペースで走れる絶好のコンディション」と動じることはない。前日から想定していた、ラスト7kmでの強い向かい風を耐えきるレースをするため、序盤は20分50秒台/5kmで入りリズムを作る。第一折り返しを超え、風を背に受けてスピードアップすると、中間点は1時間27分0秒で通過した。これは自身が持つ現在の世界記録を出したときよりも10秒早い通過タイムであり、記録の更新が十分狙える展開に。しかし、世界記録の更新は一筋縄ではいかない。35km以降は向かい風の影響も受けて苦しい走りとなった。ラップタイムを大幅に落とし、顔を歪ませる。それでも前半の好ペースの積み上げも生き、2時間57分台でまとめフィニッシュテープへ。スタートからゴールまで、女子の部、視覚障がい女子の部ともにトップを守りきっての優勝だった。ゴール後のインタビューではダブル優勝を告げられると、驚きながらも「嬉しい」と笑顔を見せた。
 続けて女子の部8位入賞となる、3時間17分08秒で西村千香選手(T12、岸和田健康クラブ)が大きく両手を上げ、笑顔でフィニッシュ。自身のベスト更新とはならなかったが、粘りの走りを見せた。3位には50秒遅れで金野由美子選手(T12、JBMA)がゴール。後半伴走者の松浦幸雄さんと手を取り合って見せた充実の笑顔が輝いていた。
 
 女子選手にとっては特に過酷な条件にも思えた今大会。その中でも道下選手の3時間を切っての優勝や、昨年12月の防府読売マラソンに続いて自己記録更新となった和木茉奈海選手(T12、JBMA)の成長等、実り多き時間となった。今回感じたそれぞれの思いや課題を胸に、再び前を向いて走り始める選手たち。より強く、より速く。来シーズンの活躍へも期待したい。
 
写真:視覚障がい女子と一般女子の2冠を達成した道下選手と河口ガイド
 

第70回記念別府大分毎日マラソン:強化指定選手コメント【女子】

道下 美里 2:57:20 T12 三井住友海上 伴走者:北村拓也、河口恵 
 前半は北村拓也さん後半は河口恵さんの伴走で世界記録更新をめざして走りました。
突風の吹き荒れる難しい天候でしたが、序盤楽なペースで刻み後半耐えきるイメージでした。
感覚はとてもよかったのですが、折り返して追い風となってからハイペースで押しきってしまい後半失速という悔しいレースとなりました。
ただ果敢に攻めの走りができたこと、失速しながらも57分台で踏み留まったことは成長でした。
今回の反省を生かし、また世界記録更新にむけて仲間と共に努力を重ねていきたいと思います。応援本当にありがとうございました。
 
西村 千香 3:17:08 T12 岸和田健康クラブ 伴走者:庄司彰義、大村剛
 今回は途中冷たい風に体が一気に冷えそうな場面もありましたが負けない気持ちを維持することができました。
結果は、まだまだ記録には及ばずなので日々の練習により一層の精進を続けていきたいと思います。
応援してくださった皆様、日々の練習をサポートしてくださる皆様本当にありがとうございました。
そして今大会を万全な対策で開催してくださいました大会関係者の皆様、スタッフの皆様に心から感謝いたします。
 
金野由美子 3:17:58 T12 JBMA 伴走者:成田フサイ、松浦幸雄
 今回は、自己ベスト更新を目標に大会に臨みました。
冷たい強風の中、無理せず自分のペースを守り、35キロ過ぎくらいまではほぼ設定ペースで走ることができました。
でも最後は脚が思うように前にでなくなり、目標には及びませんでした。
まだまだ課題はありますが、今回防府のリベンジができたこと、最後まであきらめず走ってブラインド女子3位に入賞できたことはとても嬉しいです
今後も、課題をクリアできるよう練習を続けて行きたいと思います。
このコロナ禍で、大会開催にご尽力くださった全ての皆様に、心から感謝申し上げます。

近藤寛子 3:20:08 T12 滋賀銀行 伴走者:金子太郎、川嶋久一
 これまで相性のよかった別大で、初めて別大の神様から洗礼を受けたレースとなりました。
向かい風とはいえスタートして間も無くから息が上がって、いつもとは違う異変を感じました。
いつもなら楽に通過する20㎞地点もキツくて、完走は無理かなと思いましたが、落ちていくペースに、とりあえず5㎞先までというのを繰り返しながら、
ゴールまでたどり着けたのはせめてもの救いでした。
 タイムは3時間20分8秒と初めて別大で20分を超えてしまいました。今回練習の内容や調整方法というより、自分の体の年齢的な課題をを痛感させられました。
年齢を言い訳にできる世界ではないので、今後はしっかり対策して、この課題を克服することに力をいれて、次を目指したいと思います。
コロナ禍で制限がある中、開催にご尽力くださったことに心より感謝申し上げます。
 
和木茉奈海 3:26:39 T12 JBMA 伴走者:大谷くみこ、丸一晃子
 念願が叶い今年、やっと別府大分毎日マラソンに出場することができました。
レース前は非常にコンディションが良35kmまで、イーブンペースで走れれば自己新記録を狙えるのではないか。と思っていました。
スタートしてから30km過ぎまでは、伴走者のアドバイス通りイーブンペースで走ることができました。
しかし、35kmからの向かい風に苦しみ、ラスト7kmまでに温存していた体力をうまくペースアップに繋げることが出来ずにレースを終えてしまいました。
 全体を通して自己記録更新に繋がった大会となりましたが今後の課題も見つけられた大会になりました。
 改めて一緒にレースを走って頂いた伴走者をはじめ、沿道で声援を送って頂いた観客の方に感謝を申し上げます。
また、コロナ禍にも関わらず、大会を開催していただきました関係者の皆様、我々のために、ご尽力いただきありがとうございました。
 
井内菜津美 DNF T11 みずほFG 伴走者:桂聡史、鈴木洋平
 いつも応援・サポートいただきありがとうございます。
防府読売マラソン大会で達成できなかった自己記録更新、またT11クラスの世界記録奪還を目標に、トレーニングを積んできました。
その結果として28kmでの故障棄権は悔しい結果です。
この悔しさを忘れずトレーニングを行い、もう一度フルマラソンで戦える身体を作り、最後の一歩まで諦めない強さを身につけます。
そして、次のレースで皆様への恩返しができるよう精進します。
最後に、新型コロナウイルス感染拡大の中大会の開催に尽力くださった方々には、とても感謝しています。
 

 

第70回記念別府大分毎日マラソン:強化指定選手コメント【男子】

和田 伸也 2:26:17 T11 長瀬産業 伴走者:矢嶋謙悟、長谷部匠 
 4年ぶりに別大マラソンに出場させていただきました。
コロナ禍で規模縮小となりましたが、男子の日本選手権としてIPCの部を開催いただき、ご尽力いただきました関係者の皆様に大変感謝申し上げます。
 昨年の東京パラリンピックでトラック2種目で複数メダルを獲得できたものの、マラソンでは条件に恵まれず、3大会目の出場で初めて入賞を逃し、その悔しさをここですべてぶつけるべく、考えられるあらゆる取り組みを行ってまいりました。
 結果、自己記録を5分54秒更新でき、T11クラスの世界記録を大幅に更新して優勝することができてよかったです。
ブラインド男子種目は、各長距離種目でどんどんハイレベルになり、私もそれについていくには、常に崖っぷち状態で記録を更新する取り組みが必須で、それを継続してきたことが好結果につながったのかなと思っています。
 現地応援ができない中、5キロごとの通過をご確認いただくなど、できる工夫をしてリアルタイムにたくさん応援くださっていた皆様、本当にありがとうございました。
皆様のご声援が、強風も吹き飛ばしてくれました!ありがとうございました!

熊谷 豊 2:34:06 T12 三井住友海上 
 怪我からの回復途中での別府大分毎日マラソンとなり、2時間33分台を目標に走りました。
スタート直後から向かい風でペース感覚が掴みにくい状態でしたが、中盤には折り返したことで、追い風に変わり走りやすくなりました。
残り10㎞で脚の痛みの影響で失速してしまいましたが最後まで走りきることができました。
結果は2時間34分05秒で3位入賞出来ました。
目標には届きませんでしたが次に繋げる走りが出来たと思っています。応援ありがとうございました。

高井 俊治 2:34:49 T13 D2C
 第70回記念となる別府大分毎日マラソンはパンデミックにより規模の縮小を余儀なくされた形での開催となりましたが、ブラインドの部を開催して下さった関係各位の皆様に厚く御礼申し上げます。
 私は、昨年の防府読売マラソンからお正月の徳島駅伝を走りこの大会に向けて準備してきましたが、スケジュールの時間と余裕も少ない中で当日を迎えてしまい自分のベストパフォーマンスを発揮出来たかと言うと時間の余裕が足りなかったと思います。
 当日、厳しいコンディションになることはある程度覚悟していました。
スタートして最初の折り返しで自分の今の状態を即座に判断することを誤ってしまったために、思い描く走りとパフォーマンスを発揮することが出来ませんでした。
最後まで諦めずに完走しましたが、記録も納得出来る内容とは程遠く、複雑な思いです。
またここから愚直に積み上げていき狙った的に命中出来るよう精進致します。ご声援ありがとうございました。
 
米岡 聡 2:46:11 T11 三井住友海上 伴走者:柳澤威臣、山口遥
 いつもご声援ありがとうございます。
直前まで故障を抱えつつの調整で、不安もありましたが、自己ベストには届かなかったものの、それに近いところでゴールすることができました。
ガイドの二人、支えてくださった多くの方々、皆さんに背中を押していただいてのことと思い、感謝申し上げます。
難しい状況の中、大会開催にご尽力いただきました、大会事務局の方々、関係者の皆様、誠にありがとうございました。
次に向けて、また精進して参りますので、今後ともご支援ご声援のほど、宜しくお願いいたします。

山下 慎治 2:49:29 T12 コロプラ 伴走者:山下克尚、山領駿
 今回の大会は、レース序盤からみぞおちの差し込みの痛みが出てしまいスピードに乗れず終始苦しいレース展開でした。
また終盤の向かい風でさらにペースを落としてしまって厳しい結果となってしまいました。
その他にも課題はたくさんあります。
ただ課題を改善できれば、まだまだ速くなれるはずなので、次の目標へ向けてやれることをしっかりとやっていきます。
今大会も応援ありがとうございました。

堀越 信司 DNF T12 NTT西日本
序盤から攻めて行きましたが、11k付近で転倒してしまい、走り続けるのは不可能と判断し途中棄権となりました。
大変な中で、多くの方々のご理解・ご尽力のもと大会を開催していただいたにも関わらず走り切ることすらできず、
また期待に答えることができず、大変申し訳なく思っております。
幸い、棄権の判断が早かったこともあり、今のところ大きな負傷にはつながっていないと思われます。
次のレースもありますので、様子を見ながら速やかにトレーニングを再開し、今回の悔しさを晴らしパリに向けて
成長していければと思いますので、引き続きご指導・ご声援の程よろしくお願いいたします。
 
写真:スタート直後の男子選手

ブラインドマラソン歴代記録の更新

2022年2月6日に開催された第70回記念別府大分毎日マラソンにおいて、歴代記録を更新する記録が3つ誕生しました。

男子T11クラス 

和田 伸也 2時間26分17秒 世界記録 歴代1位

唐澤 剣也 2時間28分26秒 歴代2位

 

女子T12クラス 

和木 茉奈海 3時間26分39秒 歴代8位

和田選手と唐澤選手はそれまでの世界記録2時間31分59秒を大幅に更新する見事な走りを披露してくれました。

なお、ハーフの通過記録の唐澤選手1時間12分30秒、和田選手1時間12分31秒もそれまでのハーフの世界記録を更新しており、マラソンと共に世界記録として申請中です。

歴代記録はこちらをご覧ください。http://jbma.or.jp/blind/record/

これからも、選手へのご声援よろしくお願い致します。

第70回記念別府大分毎日マラソン:レース結果

2月6日に開催された別府大分毎日マラソンの大会結果となります。
左から順位、記録、選手名、クラス、所属先、伴走者名、備考の順です。
 
男子
1位 2:26:17 和田伸也    T11    長瀬産業    矢嶋謙悟    長谷部匠 T11世界新
2位 2:28:26 唐澤剣也    T11    群馬社福事業団    小林光二 T11世界新    
3位 2:34:06 熊谷豊    T12    三井住友会場        
4位 2:34:49 高井俊治    T13    D2C        
5位 2:46:11 米岡聡    T11    三井住友海上    柳澤威臣    山口遥
6位 2:49:29 山下慎治    T12    コロプラ    山下克尚    山領駿
DNF 堀越 信司    T12    NTT西日本        
 
女子
1位 2:57:20 道下美里    T12    三井住友海上    北村拓也    河口恵
2位 3:17:08 西村千香    T12    岸和田健康クラブ    庄司彰義    大村剛
3位 3:17:58 金野由美子    T11    JBMA    成田フサイ    松浦幸雄
4位 3:20:08 近藤寛子    T11    滋賀銀行    金子太郎    川嶋久一
5位 3:26:39 和木茉奈海    T12    JBMA    大谷くみこ    丸一晃子 自己新
DNF 井内菜津美    T11    みずほFG    桂聡史    鈴木洋平
DNS 藤井由美子    T12    びわこタイマーズ    前田寛    武田浩志
 
ご声援ありがとうございました。
 

第70回記念別府大分毎日マラソン:レース展望

 大分の地に2年ぶりに号砲が鳴り響く。新型コロナウイルスの影響により1年の延期を経て開催される、第70回記念別府大分毎日マラソン大会(別大マラソン)兼第22回日本視覚障がい男子マラソン選手権大会。感染拡大の煽りを受け、大会規模が一部縮小されたが、予定通り開催される視覚障がいの部には、男子7名、女子6名が出場する。

 視覚障がい男子にとっては日本選手権と位置づけられる本大会では、史上最高レベルの頂上決戦が予想される。東京パラリンピックのマラソンで銅メダルを獲得した堀越信司選手(T12、NTT西日本)、同じくパラリンピック日本代表としてマラソンを走り、過去には別大マラソン連覇の経験もある熊谷豊選手(T12、三井住友海上)、昨年12月の防府読売マラソンで自己ベストでの優勝を飾った高井俊治選手(T13、D2C)での三つ巴での優勝争いとなるか。

 しかし、上記3選手を追う選手も実力者揃いだ。スタートリストには、東京パラリンピック1500m、5000mで2つずつメダルを獲得したスピードを持つ和田伸也選手(T11、長瀬産業)、唐澤剣也選手(T11、群馬社福事業団)、東京大会ではトライアスロンに出場し銅メダルを獲得した米岡聡(T11、三井住友海上)の3名のパラリンピックメダリストに加え、2年前の本大会でT12クラス日本歴代4位の好記録を出している山下慎治選手(T12、コロプラ)が名を連ねており、勝負にも記録にも期待がかかる。

 前日の記者会見に参加した堀越選手は、次のパリパラリンピックでの金メダル獲得を長期的な目標に掲げる中、「とにかく今回は世界を意識したペースで走っていくということを一つ大きなテーマ及び課題としている。3分20秒/km、16分40秒/5km前後のペースでいけるところまで行って、しっかり耐えて帰ってくるということができればいい。」と世界を意識した走りへの意欲を示した。

写真:大会に向けた意気込みを表す堀越選手と道下選手

 一方の女子の部も、記録更新や若手の台頭に注目だ。東京パラリンピックのマラソンで金メダルを獲得し、名実共に世界のトップに立つ道下美里選手(T12、三井住友海上)は前日記者会見の場で、「この別大マラソンまでが私の東京大会の続きかなと思っている。自身の記録を更新できるようにしっかりと最後まで粘りきって走ってゴールを目指したい。」と自らの走りで、競技を支える人への感謝を示すことへの強い思いを語った。今回は一般選手の出場が制限されたこともあり、道下選手と近いタイムで走れる選手が少なく、単独走となることも予想されているが、「自分のペースで走れるのは利点」と前向きに捉え、4度目のフィニッシュテープを目指す。

 道下選手を追うのは3時間10分台の記録を持つ、井内菜津美選手(T11、みずほFG)、近藤寛子選手(T11、滋賀銀行)、西村千春選手(T12、岸和田健康クラブ)、金野由美子選手(T11、JBMA)の4名だ。近い記録を持つ4選手でペースを作り、良いリズムで前を追ってもらいたい。T11クラスでは、東京パラリンピックで海外選手に塗り替えられた世界記録を再度日本勢で更新なるかにも注目だ。

 さらに、昨年12月の防府読売マラソンで3時間30分を切る自己ベストを出し今大会の切符を掴み取った、若手成長株筆頭の和木茉奈海選手(T12、JBMA)も出場が予定されており、さらなる記録更新となるか、こちらも見どころの一つとなってくる。

 本大会は別府湾沿いを走るコースだが、明日は北北東の風6mの強風が予報されており、スタートから10kmと、35km以降のラスト7kmで向かい風が想定される。冷たい海風に耐え、大分市営陸上競技場に一番に帰ってくるのは誰か。レースは2月6日12時スタートだ。

文責、写真:太田萌枝

第52回防府読売マラソン:強化指定選手コメント

高井俊治 男子1位 2:29:39 D2C  自己新
今回の防府読売マラソンに向けて8月から10月まで月800kの走り込みを実施してどのような状況でも自己記録の更新を確実に達成する強い覚悟でスタートラインに立ちました。
当日のコンディションは非常に厳しい強風が吹き荒れていましたが時より覗かせる太陽の陽射しが暖かく感じそこまで走りにくいとは感じませんでした。
私の選んだ集団も運が良く大集団となり設定していたタイムよりやや速くなりましたがそれでも準備してきた体力の範囲内で最後まで行けそうな感じでした。
32k で集団についていけなくなりましたが未知のペースにもかかわらず30kの壁もクリアし残りはただひたすらに競技場を目指しました。
後半10kは時計を見る事もなく身体と足を1秒でも速く動かすことを考えて走りました。結果は自己記録を1分以上更新しこれまで目標にしてきた2時間30分も突破出来ました。
これまで強化合宿、富津練習会にて愚直に走り込んできたことが表現出来たことを大変嬉しく思います。
ここからがマラソンのスタートラインだと思うので更に飛躍出来るよう精進致します。ご声援誠にありがとうございました。

山下慎治 男子2位 2:41:12 コロプラ 伴走者:山下克尚、山領駿
今シーズン最初の大会は強風に苦しんでしまい、目標としていていたタイムに届かない結果となってしまいました。
いま取り組んでいる体幹強化を引き続きおこない、今後は風に負けない身体作りをしていきます。
応援していただきました皆さま、ありがとうございました。

米岡聡 男子3位 2:48:23 三井住友海上 伴走者:柳澤威臣、山口遥
いつもたくさんのご支援、ご声援ありがとうございます。
久しぶりのマラソン、準備はしてまいりましたが、しっかりとマラソンの苦しさ、しんどさを感じるレースでした。
なかなか想定通りにはいかないところもありましたが、次に向けての課題も明確になりましたので、別大マラソンに向けて、
引き続き、一歩ずつ取り組んでまいりたいと思います。
今回もサポートいただいたガイドの二人、大会事務局の皆様、スタッフの皆様、誠にありがとうございました。

写真1:伴走者交代をする山下慎治選手と山領ガイド、山下克尚ガイド

道下美里 女子1位 2:54:13 三井住友海上 伴走者:北村拓也、河口恵
いつも応援ありがとうございます。本大会は,,十分な練習が出来ていない中で臨みましたが,次の大会にむけてレース感覚を取り戻すこと,
昨年失速したラスト向かい風区間をしっかり上げて終えることを目標に走りました
思い描いたとおりのペースで後半ペースアップできたことは,大会に参加されたランナーの皆様が道を譲ってくださったり,
伴走の二人が安心安全に最後までリードしてくれたこと,そして何より地元山口県の皆様をはじめ,たくさんの熱いエールをいただきながら走ることができたからだと思っています。
むかい風の中でもラストまで力むことなくリズムを維持できたことは自身の収穫でもありました。本年度はまだ慌ただしいスケジュールではありますが,
徐々に練習量を増やし,次の大きな大会に備えていきたいと思います。応援本当にありがとうございました。

近藤寛子 女子2位 3:15:10 滋賀銀行 金子太郎、川嶋久一
コロナ禍の中で開催いただいたこと、また一般の選手との接触もなく、レース前にもストレスなく過ごせるご配慮いただくななど、感謝の思い出す。ありがとうございます。
結果は女子の日本選手権2位。限りなく自己ベストに近づけたい思いはありましたが、思いの外きつい展開だったので、ここはあきらめずにしっかり自分の走りをすることに集中しました。
あきらめなくてよかったと思えたゴールでした。
年齢的な体調の変化もありましたが、夏から少しずつ積み上げて、まずはここに向けて仕上げてきました。ここをステップとして、次は相性のいい別大!しっかりと調整していきたいと思います!

井内菜津美 女子3位 3:18:56 みずほFG 伴走者:桂聡史、鈴木洋平
更新されてしまったT11クラスの世界記録奪還をめざし、防府読売マラソンは3時間10分切りを目標にトレーニングを続けてきました。
レース前半は設定ペース通り走れていましたが、向かい風や寒さの影響を受けて体力が思った以上に消耗し、30km以降失速してしまったことで、
とても悔しいレースになりました。このレースで明らかになった課題を改善して次の別府大分毎日マラソンで自己記録更新を狙います。
今回もたくさんの方々の応援・サポートのおかげで最後まで諦めずに走ることができました。本当にありがとうございました。
そして新型コロナウイルス感染症への不安もある中で、万全な感染対策で大会を開催してくださったすべての関係者の皆さまに感謝いたします。

金野由美子 女子4位 3:23:15 JBMA 伴走者:松浦幸雄、落合新  
東京パラ選考レースの後故障してしまい、ほぼ一年走れずにいました。
今年4月から練習を再開して、この大会を復帰レースとして目標に練習をしてきました。
今シーズンはトラック練習がほとんどできず、スピードにやや不安はありましたが、秋からの合宿にも参加し距離走などはできていたので、当日は自己ベストを目標にスタートしました。
しかしそう甘くなく、後半大失速してしまいました。
強風の影響もありましたが、やはりまだベストを狙うだけの脚ができていないことを痛感しました。
それでもラスト35キロ過ぎから、少しでもペースを取り戻してゴールできたことは、次の試合に繋げられるのではないかと思っています。
次の別台も頑張ります。
このコロナ禍の中で、大会を開催していただいたことに心から感謝いたします。

和木茉菜海 女子5位 2:28:51 出野ひろみ、丸一晃子 自己新 
今回の大会ではコロナ禍ということもありフルマラソンを走るのが一昨年の防府マラソン以来と言うこともあり、スタート前は少し緊張していました。
スタートしてからは、自分のペースで走ることだけを心がけていました。
30キロ過ぎてからペースが落ち苦しい状況ではありましたが、沿道の方々や周りのランナーの方々による応援の言葉、今まで支えていただき走ってくださった伴走の方に励まされ無事ゴールをすることができました。
結果は、自己記録を16分6秒上回ることが出来、目標としていた3時間30分を切ることができました。
今回の結果に満足することなく、出場する大会では常に自己ベストを更新できる様、練習に励みたいと思います。
今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。

西村千香 DNF 岸和田健康クラブ 伴走者:宮里康和、庄司彰義
今回怪我をした脚の調子により途中棄権という経験をしました。その選択をしたのは自分自身なので数少ない残りのレースとなりますが地道に積み重ね結果を出したいと思っています。
日々の練習にご協力くださる伴走者と応援してくださる皆様本当にありがとうございました。また今大会を万全なコロナ対策で開催してくださいました大会関係者様、スタッフの皆様に心から感謝いたします。

写真2:手渡しによる給水を受け取る金子ガイドと近藤選手

【緊急】代々木公園練習会練習会中止のお知らせ

1月16日(日)に、東京クラブ様と合同での開催を予定しておりました「JBMA代々木公園練習会」は、新型コロナウイルス感染症の感染状況悪化のため、中止いたします。

大変残念ですが、ご理解いただけますようお願いいたします。

2022年1月7日 特定非営利活動法人日本ブラインドマラソン協会事務局

第12回お台場駅伝大会のご案内

毎回、視覚障がいの部を設けていただいている「第12回お台場駅伝大会」の

要項が発表されましたので、ご案内します。

開催日;令和4年2月23日(水・祝)

会場;お台場シンボルプロムナード公園(東京都江東区青海1-3ー12)

種目;1区間2.6㎞×5区間、13㎞

エントリー受付期間;1月5日~1月26日

問い合わせ先;Kissポート財団スポーツ事業課

(℡;03-5439-6201 e-mail;sportsjigyo@kissport.or.jp)

詳細は、以下のHPをご覧ください。

https://runnet.jp/entry/runtes/user/pc/competitionDetailAction.do?raceId=292634&div=1

 

第52回防府読売マラソン:レース記事 女子

 「防府は私をマラソン選手として育ててくれたレース。」(道下美里選手、T12、三井住友海上)地元への感謝の気持ちを胸に挑んだ凱旋レースは、充実の内容となった。視覚障がい女子の部において日本選手権ともなる第52回防府読売マラソンは、東京パラリンピック覇者の道下選手が2時間58分06秒で圧巻の5連覇。3時間切りの好タイムでパラリンピックイヤーを締めくくった。また、同T12クラス期待の若手、和木茉奈海選手(T12、大阪陸協)は自己新記録を樹立。今後の課題と次の目標を見つけた、実り多き大会となった。

 

 視覚障がい女子の部には、2人の他、近藤寛子選手(T11、滋賀銀行)、井内菜津美選手(T11、みずほFG)、金野由美子選手(T11、JBMA)、西村千春選手(T12、岸和田健康クラブ)の計6名が出場し、伝統ある大会で日本一の座を争った。

 昨年にはT12クラスの世界記録を樹立するなど、コースのことは知り尽くしている道下選手。スタート後約3km続く直線コースを含む最初の5kmは、向かい風の影響もあり、21分32秒と落ち着いた入りとなったが、その後は徐々にペースを上げていく。「後半上げていくような走りをしたいと思っていた」という言葉どおり、中間点を通過したあとは5kmあたりのラップタイムを20分50秒台までビルドアップ。25km地点を超えてから待ち構える二度のアップダウンももろともせず、スピードを維持したまま競技場へ姿を見せると、2時間台で五度目のフィニッシュテープを切った。

写真1 堂々の優勝を飾った道下選手と河口ガイド

 今大会は、小柄な女子選手にとっては特に過酷な条件に思える、強風を伴うコンディションとなった。そんな中でも、見事思い描いた通りのレースを展開して見せた道下選手。その要因は今夏の東京パラリンピックに向けて積んできたトレーニングによって作られた強いフィジカルにあった。「腰と背中とお尻の動きが繋がってきた感じがする」と自身でも振り返った通り、体幹が強化されたことで腰が落ちにくくなり、レース後半にもストライドを保つことが可能になった。自らの目標に向かい、常に進化をし続けるトップアスリートが次に目指す場所とは。強い絆で結ばれた伴走者や、たくさんの声援を背に輝きを増す姿から目が離せない。

  自身初の3時間30分切りとなる、3時間28分51秒で5位入賞を果たした和木選手は前半から積極的に入り、5kmあたり24分20〜30秒前後のラップを維持しながらレースを進める。コースの起伏や向かい風の影響も受ける後半はペースを落としたものの、伴走者の声掛けに力をもらいながら、ゴールラインまで全力で駆け抜けた。「前半貯めた分を後半に使ってしまった。後半もっと粘っていけたら(3時間)25分を切るようなところも目指せるかな。」(和木選手)自身のレースをそう振り返った和木選手。その心はすでに、今回自ら切符を掴み取った別府大分毎日マラソンに向いていた。来年2月、どんな走りを見せてくれるのか。今後の活躍が楽しみだ。

写真2 自己ベストをマークした和木選手と丸一ガイド

文責・写真:太田 萌枝